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Showing posts from September, 2022

第34回 クアッドを低く見る中共

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第34回  クアッドは対中国戦略の米構想で、参加国やASEANが米国の手先に利用されるだけだ   この記事は中共の一部とされる環球時報英語版の社説を紹介するものであり、当ブログの意見ではありません。   Illustration: Liu Rui/GT   ア ジア太平洋地域で中国を封じ込める目的の米国主導の地域メカニズム「クワッド」の野望が、地域や国際舞台で雪だるま式に膨らんでいる。   米国、オーストラリア、日本、インドの4カ国の外相は、現地時間の金曜日、ニューヨークの国連総会の傍ら会談した。これは、2月11日の第4回クアッド外相会合以来の会談となった。   4カ国は共同声明で、「包括的で弾力性のある、自由で開かれたインド太平洋の推進」を支援するため、多国間協力を引き続き深めていくと再確認した。特に、声明では、クアッドが「ASEANの統一と中心性、ASEAN主導の地域アーキテクチャ、ASEANのインド太平洋に関する展望の実践的実施に対する揺るぎない支持」を改めて強調した。   ASEANは四極メカニズムの地政学的戦略にとって不可欠で、クアッドがASEANの統一と中心性を強調する形で活動する期待がある。しかし、クアッドがASEANの役割を純粋に評価しているというのは、現実離れした話だ。前者がより高く評価しているのは、後者をいかにして壮大な反中国計画の手兵として利用するかだろう。   ある国際関係専門家は環球時報取材に対し、「ASEAN中心」のレトリックを繰り返すことで、クアッドはアジア太平洋地域における自らの将来の行動に対し、より多くの地域諸国の支持を獲得し、アジア太平洋でますます重要な位置を占める中国をヘッジするねらいがある、と語っている。   「このことは、このグループが冷戦思考とブロック政治の論理に依然固執していることを証明している」とこの学者は述べている。   クアッドは本質的にASEANの中心性を損なっている。特に中国を排除した徒党を組み、地域の経済・安全保障の秩序を支配しようとしている。それはASEAN加盟国を含む地域のほとんどの国の意思に逆らうだけでなく、地域情勢を不安定にしかねない。   しかし、クアッド外相声明が真に際立つのは、国連安保理の常任・非常任の議席拡大を含む包括的な国連改革アジェンダの推進に対するコミットメントである。   クワッドは当

第33回 沖縄県知事選挙結果を好意的に受け止める中共の視点 環球時報社説

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第33回 環球時報社説 沖縄人民の正当な要求をこれ以上無視するな ポイント 沖縄県知事の再選は喜ばしい 米軍基地が歓迎されないのは当然だ 米軍は平和の破壊者だからだ 平和を願う沖縄の願いを無視する日本政府は米国に追従しているのみだ 沖縄の正当な価値観を東京は尊重すべきだ(沖縄独立?)   Okinawa's incumbent governor Denny Tamaki. Photo: from IC.     日 曜日に行われた沖縄県知事選挙で、現職の玉城デニー(無所属)が、自民党が支援する佐喜真淳を破り再選を果たした。米海兵隊普天間飛行場の県内移設に反対し、米軍基地の縮小を訴えたことが、玉城の勝利の主な理由とされる。これは岸田文雄政権もジョー・バイデン政権も望まない結果だが、東京とワシントンは再選結果が反映している沖縄の世論が聞こえないふりをするのはやめるべきだ。     在日米軍施設の70%以上が沖縄に集中していることはよく知られており、在日米軍の非道な記録は沖縄にあまりにも過大な負担を強いている。普天間飛行場の移設計画は、米兵3人が日本人女子学生を強姦した1995年の沖縄レイプ事件に端を発する。「治外法権」の保護のもと、米軍が強盗、強姦、殺人、麻薬販売など悪質な事件を日本で頻繁に起こしている。COVID-19パンデミック発生後、米軍基地は無秩序な「感染源」と化した。長い間、沖縄は米軍基地の県外移設を望んできたが、東京はこれらの施設を県内移設するよう沖縄に圧力をかけてきた。これは「左手にあるものを右手に与える」ことに等しい。   さらに悪いことに、米国が中国封じ込め戦略の推進を加速し、日本が状況を悪化させ続ける中、 これらの行動は直接的に台湾海峡の緊張を誘発し、激化させたのである 。こうした外的要因が重なり、沖縄は地政学的対立の最前線にさらに追いやられてしまった。「安全保障の維持」の旗印の下、日米両国は沖縄にさらに多くの兵器を配備している。今年初めには、防衛省が石垣島に「驚異的に巨大な」ミサイル基地の建設を推進していると発表があった。今回の選挙結果は、沖縄からの強い抵抗のシグナルである。人々は明らかに、大国間の対立のため「大砲の餌」になることを望んでいない。彼らは、沖縄が 「平和の島 」になることを望んでいる。   長年にわたり、米軍が沖縄の人々に与え

第32回 IPEFは米主導の対中対策の一環にすぎない。米国の自分勝手な態度で発足前からその行方は不安と見る中共

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  第32回  米主導のIPEFを見下す中共 中共の考えるポイント IPEFはRCEPの基盤切り崩し、ひいては反中政策のツールが本質の狙いだ IPEFにいやいや参加している国もあり、米国にいわれてすぐ参加したのは日本くらいだ IPEFには拘束力がなく、米国の都合で一夜にして変化する可能性もある 今後IPEFの交渉などが動けば米国のご都合主義が露呈するだろう   Illustration: Chen Xia/Global Times     長 く世論を騒がせてきた、米国主導で合計14カ国が参加するインド太平洋経済枠組み(IPEF)の第一回閣僚会議が、木曜日から金曜日にかけロサンゼルスで開催された。米政府当局者は、これは参加国が中国と米国のどちらかにつくかを決める意味ではないと主張しているが、人々をなだめる隠蔽工作で不誠実な発言にすぎない。米欧メディアの関連報道では、ニュースの見出しに「反中」が頻繁に登場し、中にはIPEFが 「米国にとってインド太平洋で中国に対抗する最善の方法」とまで宣伝し待ちきれない者さえいるほどだ。   今年5月、ジョー・バイデン米大統領が訪日し、IPEF発足を発表した。IPEFが「典型的な貿易取引を超えた」ものであり、この地域で「肯定的な経済的アジェンダを持つ」という米国の自画自賛は、IPEFの「生来の欠陥」を覆い隠す装いに過ぎない。「非典型的」なため、関税の軽減や市場アクセスなどの取り決めを含まないため、加盟国が実質的な経済的利益を得ることが難しいこと、その「革新性」は、議会承認を必要とせず、加盟国が自由に4本柱へ参加を選択できることだ。つまり、IPEFは法的拘束力を持たないのだ。   さらに重要なことは、IPEFは「経済協力」で塗り固められているが、根底には中国封じ込めの「政治的枠組み」があるということだ。ワシントンの真の目的は、中国から「切り離された」アジア太平洋地域でサプライチェーンと産業チェーンの小さな輪を作ることである。これは明らかにアジア太平洋諸国の死活的利益を損なうものであり、ほとんどの国が懸念し、反対している。同時に、加盟国政府の中には、IPEFに参加する「必要性」を国民に説明できないところもある。大半は懐疑的な態度で交渉に参加し、中には米国になだめられたすえに参加したものもある。   ワシントンはIPEFで、貿易・労働・デジ

第31回 トラス英首相は国内問題に集中すべきで、反中政策を遂行扨せなければ、自分たちは楽になると考える中共

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  第31回 トラス英首相には内政に専念いただき、中国敵視政策はご遠慮願いたい   ポイント 英国はインドにも経済規模で抜かれた危険な段階にある国となった インフレ経済で国内が混乱する中、新首相が対外問題に国民の不満をぶつける愚かな政策を取る可能性がある 選挙期間中にトラスは中国を露骨に敵視刷る発言が目立った 英国には国内問題に取り組んでもらい、中国の利益を害する行為を自粛してもらいたい   では環球時報の社説をご覧ください。   2022年5月27日、プラハで行われたチェコ側との会談で撮影されたリズ・トラス英外務長官 Photo: AFP   8 週間に及ぶレースの末、英国保守党党首選挙の結果が月曜日に発表される。各種世論調査によると、現外務大臣のリズ・トラスが当選する可能性が高い。エリザベス2世は火曜日に現首相ボリス・ジョンソンの辞任を受け入れ、新党首は女王の招きで英国首相となり、新内閣を発足させる。新首相は英国に新たな息吹を吹き込むことができるのか。英国民や英国の同盟国は、この見通しについて、どちらかといえば悲観的だ。同時に、EUや米国からトラスに対する「懸念」の声が上がっており、選挙戦中の中国やロシアに対する彼女の激しく荒っぽい暴言も、懸念を呼んでいた。       さらに悪いことに、英国の新首相が就任しようとしているときに、国際通貨基金の最新データによると、2021年の最後の3カ月間にインドが英国を抜き世界第5位の経済大国になった。2022年の第1、2四半期に英国経済は緩やかに成長したが、インド経済は今年、7%以上の成長を達成すると予想されている。両国の格差はさらに広がるだろう。100年以上前に米国のGDPが英国を上回った後、旧植民地の経済が宗主国を追い越した例がこれでもか、というほどある。英国は達観しているとはいえ、旧植民地(現在は英連邦の一員)が歴史的に追い越したことで、英国エリートの優越感や傲慢さが刺激されたのは間違いない。   明らかに、英国は「危険な臨界点」にあり、新首相に解決すべき問題が山積している。その最たるものが、生活費高騰が英国の庶民を窒息させ、一部の貧困家庭は生命の危機にさえ直面していることだ。同国のエナジー料金は10月から80%高騰する。寒い冬が近づき、この冬は相当数のイギリス人が凍死する可能性の予測も出ている。さらに深刻な問題は、

第30回 日本のアフリカ開発援助の真意を疑い、小国として嗤う中共

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第30回 日本のアフリカ開発援助イニシアチブTICADを嗤う中共 ポイント(環球時報社説より)   日本はグローバルプレゼンスを拡大する前に福島原発処理水問題を解決すべきだ(日本の役割を拡大させたくない) 日本は小国で、大国の中国にアフリカ関係でもかなわない 日本が米国に追随し中国を貶めようとしているのが気に食わない   Illustration: Chen Xia/GT   日本はますますグローバルパワーを目指し、海外の地政学的利益を重視し、自国の環境安全保障や近隣諸国の安全保障より優先する動きを示している。土曜日、第8回アフリカ開発会議(TICAD)がチュニジアで始まり、日本の岸田文雄首相はオンラインスピーチで、人的資本への投資と質の高い成長の育成に重点を置き、アフリカ開発のため今後3年間で300億ドルを拠出することを約束した。しかし、今回の日本の対アフリカ援助には、アフリカ大陸からほとんど反応がなく、多くのアフリカ諸国からは倦厭の念すら持たれている。   日本は古くから援助を重要な外交手段とし、アジア諸国で早くからアフリカに目を向けてきた。1991年には世界一の援助国だったが、その後援助総額は縮小している。このような状況下で形成されたTICADというメカニズムは、日本の外交、政治、経済的配慮を尽くした多国間メカニズムと考えられると、中国社会科学院西アジア・アフリカ研究所アフリカ研究部長の何文平は指摘する。   日本は政治的、外交的に「普通の国」、さらに国連安保理の常任理事国入りを目指している。そのため、TICADは、アフリカ大陸54カ国から日本への支持を集める「要請メカニズム」として期待されている。経済的にも、資源に乏しい小国日本にとって、アフリカの豊富な資源と広大な市場は、長期的な発展の観点から必要である。   今回の会議について、日本は今、アフリカに対する地政学的な配慮を強めているようだ。中国国際問題研究所の楊西玉主任研究員は、岸田首相が講演で「日本はアフリカとともに成長する」と強調し、中国との違いを示したことから、日本が中国をアフリカでの競争相手と考えていることが明らかになったと指摘する。アフリカにおける中国の存在なくして、東京がこれほど大きな協力プロジェクトを提案したとは考えにくい。   一方、日本は、中国が提唱する「一帯一路」構想に対抗するワシントン