第31回 トラス英首相は国内問題に集中すべきで、反中政策を遂行扨せなければ、自分たちは楽になると考える中共

 第31回

トラス英首相には内政に専念いただき、中国敵視政策はご遠慮願いたい

 

ポイント

  • 英国はインドにも経済規模で抜かれた危険な段階にある国となった

  • インフレ経済で国内が混乱する中、新首相が対外問題に国民の不満をぶつける愚かな政策を取る可能性がある

  • 選挙期間中にトラスは中国を露骨に敵視刷る発言が目立った

  • 英国には国内問題に取り組んでもらい、中国の利益を害する行為を自粛してもらいたい

 

では環球時報の社説をご覧ください。

 

British Secretary for Foreign Affairs Liz Truss is pictured during a meeting with her Czech counterpart on May 27, 2022 in Prague. Photo: AFP

2022年5月27日、プラハで行われたチェコ側との会談で撮影されたリズ・トラス英外務長官 Photo: AFP

 

8週間に及ぶレースの末、英国保守党党首選挙の結果が月曜日に発表される。各種世論調査によると、現外務大臣のリズ・トラスが当選する可能性が高い。エリザベス2世は火曜日に現首相ボリス・ジョンソンの辞任を受け入れ、新党首は女王の招きで英国首相となり、新内閣を発足させる。新首相は英国に新たな息吹を吹き込むことができるのか。英国民や英国の同盟国は、この見通しについて、どちらかといえば悲観的だ。同時に、EUや米国からトラスに対する「懸念」の声が上がっており、選挙戦中の中国やロシアに対する彼女の激しく荒っぽい暴言も、懸念を呼んでいた。

 

 

 

さらに悪いことに、英国の新首相が就任しようとしているときに、国際通貨基金の最新データによると、2021年の最後の3カ月間にインドが英国を抜き世界第5位の経済大国になった。2022年の第1、2四半期に英国経済は緩やかに成長したが、インド経済は今年、7%以上の成長を達成すると予想されている。両国の格差はさらに広がるだろう。100年以上前に米国のGDPが英国を上回った後、旧植民地の経済が宗主国を追い越した例がこれでもか、というほどある。英国は達観しているとはいえ、旧植民地(現在は英連邦の一員)が歴史的に追い越したことで、英国エリートの優越感や傲慢さが刺激されたのは間違いない。

 

明らかに、英国は「危険な臨界点」にあり、新首相に解決すべき問題が山積している。その最たるものが、生活費高騰が英国の庶民を窒息させ、一部の貧困家庭は生命の危機にさえ直面していることだ。同国のエナジー料金は10月から80%高騰する。寒い冬が近づき、この冬は相当数のイギリス人が凍死する可能性の予測も出ている。さらに深刻な問題は、景気回復の遅れだ。英国商工会議所は最近、2022年末までに英国経済がリセッションに陥ると警告している。

 

このような厳しい国内情勢と、回避できない多くの深刻な問題に直面して、与党にはより強い使命感と緊急性が喚起されたはずである。しかし、保守党は何をしているのか。現実の問題に直面し途方に暮れ、政治的内紛や他国への攻撃ばかりに目を奪われている。

 

特にトラスは選挙期間中、中国とロシアの脅威を煽り、国防予算増額を懸命にアピールし、核のボタンを押すことは 「首相の重要な任務」だとまで言っているのである。選挙期間中にトラスが行った最も明確な公約は、2030年までに国防費をGDPの3%に引き上げることだった。これは1950年代以降で最大の増額となる。

 

トラスは、新たな「鉄の女」を目指しているとの声もある。彼女はよくマーガレット・サッチャー元英国首相と同じような服装をしており「鉄の女」の作法を真似したいのだそうだ。しかし、鉄の女になるためには、時代の流れを認識し、硬直した時代遅れの「帝国主義」を改める必要がある。特に、彼女は国内の現実的な発展にもっと焦点を当てるべきで、日和見主義的に矛盾をそらすのではなく、また「中国に強くなる」ことを日課とするのでもない。結局のところ、地政学的な駆け引きは脚光を浴びても、英国の問題を解決することはできないのである。

 

また、選挙期間中のトラス氏の発言に、もし首相になったら、中国を英国にとっての「国家安全保障上の脅威」と宣言するかもしれない、というものがある。つまり、「中国の脅威」を誇張し、他国を非難することで国内の関心を逸らそうとするのは、いい加減な政治トークショーの俳優が演じる古い手で、政治家の統治能力の欠如を露呈する以外の目的はない、ということである。この時代、ヨーロッパやアメリカの政治家が現実的で革新的な外交政策の道を切り開くことは困難だ。最も簡単な方法はポピュリズムに迎合することだが、これは自国に、もっと困難な運命をもたらすだけである。

 

最新の世論調査によると、英国有権者はトラスが次期首相になると考えているにもかかわらず、彼女の全国的な支持率は低いままだ。英国人の12%だけがトラスを良いリーダー、または素晴らしいリーダーになると期待し、52%は彼女を悪いリーダー、またはひどいリーダーになると見ている。新英国首相には、現状と世論の反応に触発され、外野のネガティブな印象を打破・反転させるだけの意義ある実践的行動を起こし、英国民の未来への新しい期待に火をつけることが期待されている。中国を含む世界の大多数の国々がこれを望んでいる。■

 

New UK PM should not treat ‘being tough on China’ as routine: Global Times editorial

By Global Times

Published: Sep 05, 2022 01:00 AM


Comments

Popular posts from this blog

第66回 経済の先行きに不安が広がる中必死に経済崩壊論を否定する中共だが、民間による経済発展を抑え込むしかできないので結局何も対応できず、中国経済には破局がやってくる

第67回 福島「汚染水」放出問題に対する中共の考え方は予想通りだが、あらためて世界で孤立するのも無理はないと示すもの。要は科学は関係なく、日本を今後数十年いびり倒すことにあるのか。

第80回 中共は新年を迎え、このような価値観で物事を見ている。そこには現実を直視する勇気はないようだ。