第32回 IPEFは米主導の対中対策の一環にすぎない。米国の自分勝手な態度で発足前からその行方は不安と見る中共

 第32回 米主導のIPEFを見下す中共

中共の考えるポイント

  • IPEFはRCEPの基盤切り崩し、ひいては反中政策のツールが本質の狙いだ

  • IPEFにいやいや参加している国もあり、米国にいわれてすぐ参加したのは日本くらいだ

  • IPEFには拘束力がなく、米国の都合で一夜にして変化する可能性もある

  • 今後IPEFの交渉などが動けば米国のご都合主義が露呈するだろう

 

Illustration: Chen Xia/Global Times

 

 

く世論を騒がせてきた、米国主導で合計14カ国が参加するインド太平洋経済枠組み(IPEF)の第一回閣僚会議が、木曜日から金曜日にかけロサンゼルスで開催された。米政府当局者は、これは参加国が中国と米国のどちらかにつくかを決める意味ではないと主張しているが、人々をなだめる隠蔽工作で不誠実な発言にすぎない。米欧メディアの関連報道では、ニュースの見出しに「反中」が頻繁に登場し、中にはIPEFが 「米国にとってインド太平洋で中国に対抗する最善の方法」とまで宣伝し待ちきれない者さえいるほどだ。

 

今年5月、ジョー・バイデン米大統領が訪日し、IPEF発足を発表した。IPEFが「典型的な貿易取引を超えた」ものであり、この地域で「肯定的な経済的アジェンダを持つ」という米国の自画自賛は、IPEFの「生来の欠陥」を覆い隠す装いに過ぎない。「非典型的」なため、関税の軽減や市場アクセスなどの取り決めを含まないため、加盟国が実質的な経済的利益を得ることが難しいこと、その「革新性」は、議会承認を必要とせず、加盟国が自由に4本柱へ参加を選択できることだ。つまり、IPEFは法的拘束力を持たないのだ。

 

さらに重要なことは、IPEFは「経済協力」で塗り固められているが、根底には中国封じ込めの「政治的枠組み」があるということだ。ワシントンの真の目的は、中国から「切り離された」アジア太平洋地域でサプライチェーンと産業チェーンの小さな輪を作ることである。これは明らかにアジア太平洋諸国の死活的利益を損なうものであり、ほとんどの国が懸念し、反対している。同時に、加盟国政府の中には、IPEFに参加する「必要性」を国民に説明できないところもある。大半は懐疑的な態度で交渉に参加し、中には米国になだめられたすえに参加したものもある。

 

ワシントンはIPEFで、貿易・労働・デジタル経済、クリーンエナジー・脱炭素化、サプライチェーンの強靭化、税制・腐敗防止という4本「柱」を想定している。確実なのは、ワシントンが参加国に対していかなる譲歩もしないことだ。過去の経験から、ワシントンが実際に行うのは、さらなる要求をすることで、中国の産業チェーンから「切り離す」よう他国を煽る一方で、これらの国々を静かにアメリカの経済的属国にしようとする。中国に対抗することがワシントンの公然の計画で、経済的属国と地政学的手先を同時に多数作り出すことがワシントンの秘密の計画である。このことで、アジア太平洋諸国が高い警戒心を喚起されている。

 

奇しくもIPEFは、今年初めに発効した地域包括的経済連携(RCEP)と重なるメンバーが多い。RCEP加盟国15カ国のうち、IPEFに参加しているのは11カ国。IPEFに加盟していないのは、中国、カンボジア、ラオス、ミャンマーの4カ国だけだ。さらにIPEF加盟国のうち、米国、インド、フィジーを除けば、残りの11カ国はすべてRCEPの加盟国だ。

 

米国は、IPEFを利用しRCEPを傷つけ、地域自由貿易協定を空洞化させようとしている。しかし、地域経済統合を堅実に推進してきたRCEPに比べて、IPEFは大きな空虚な殻に過ぎない。参加国はそれぞれ独自の利益要求があり、すべての国が日本のように米国の命令に従うことは不可能である。

 

参加国の多くは、IPEF交渉を通じ米国の市場開放へのコミットメントを得ることを望んでいるが、ワシントンはIPEF交渉が米国の労働者や中小企業に利益をもたらすと宣伝しており、異なる利害関係者の要求の間のギャップを埋めることに関心を示していない。

 

さらに、IPEFは大きな不確実性に直面している。その進展は大統領の行政命令によってのみなされる。米国政府が変われば、交渉の合意内容がいつでも覆される可能性がある。共和党が政権を取れば、公正取引、デジタル経済、クリーンエナジーに関連する内容が直ちに大幅に改定される予想がある。つまり、IPEFの4本柱のうち3本が一夜にして崩壊する可能性がある。

 

まだTPPの記憶が新しく、IPEFをベンチマークするためTPPを使う向きが多い。2016年、ワシントンは中国を封じ込めるために、TPPを構築した。6年が経過した今、中国と米国を含む国際社会はより深く融合している。ワシントンは相変わらず保護主義や一国主義にこだわり、気まぐれに世界を恫喝することさえある。IPEFが具体化する前に、米国の一部の人々は、「歯のないIPEFは米国にとって不利であり、地域における我々の関係にとって破滅的である」と主張し、IPEFに歯を取り付けることを切望していた。このようなブロック対立の考え方や地政学的な邪念が、IPEFの行方を決定づけている。

 

IPEFの舞台は用意されたが、芝居はこれからだ。ワシントンは自国の覇権だけを考え、他国の利益には無関心であり、この茶番劇は一時的なものだ。■

 

 

 

Washington weaponizes IPEF even before it takes shape: Global Times editorial

By Global Times

Published: Sep 09, 2022 12:35 AM


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