第41回 中国経済の特徴、いびつさをGDPの分析から理解しよう。CSISのプロジェクトからのご紹介

 

第41回 今回はCSISのChina Powerプロジェクトからのご紹介です。中国経済の知識をアップデートしましょう。


Unpacking China's GDP | ChinaPower Project



 

内総生産(GDP)は、一国の経済規模や経済力を示す重要指標だ。GDPは一般的に、特定期間に一国の国境内で生産された完成品とサービスすべての市場価値の合計と定義される。  GDPは完璧な経済指標ではない。経済の健全性や生産性を示す複雑さを欠き、さらに中国の公式経済数値は歪曲されていることが知られている。しかし、GDPはマクロ経済のデータポイントで最も引用されるものであり、追跡する価値はある。

 GDPに関して言えば、中国は多くの点で世界の異端児だ。経済規模は発展途上国よりずっと大きく、数十年にわたり急速な経済成長を持続してきた。しかし、中国経済は世界の主要先進国と多くの点で異なる。以下のChinaPower記事には、GDPのを分解比較するのに役立つ、最新データ含む10点のチャートを示す。

 


中国のGDPを測る

 数世紀にわたり、中国とインドはそれぞれで世界のGDPの4分の1から3分の1を占めていた。巨大人口のおかげでもある。しかし、19世紀に入ると、欧米が工業化で生産性が急速に向上し、中国とインドのGDP比率は急低下した。1970年代後半になると、中国は市場改革と対外開放を進め、経済成長を持続させることに成功した。現在、世界のGDPに占める中国の割合は、物価変動調整後で18%以上となり、どの国よりも大きい。(下図 1500年以来の各国のGDP比率)

 


 

 GDPは測定と比較方法により、結果が大きく変わる。そのうち名目GDPは、各国で生産された財やサービスを米ドルなど共通通貨に換算する方法だ。最も簡単な方法だが、価格や通貨の変動による歪みが入る。もう一つの方法は、各国の物価水準の違いを考慮した購買力平価(PPP)でGDPを測定する方法だ。PPP測定は、裕福国と発展途上国を比較する際に大きな影響を与える。中国の名目GDPは米国に次ぐ第2位だが、PPP測定だと米国を大きく上回る。(下図 名目GDPと購買力平価GDPによる各国比較)


 

 多くの点で、中国は経済大国の中で異端児だ。ほとんどの先進国は開放的で民主的な社会だが、中国は権威主義国家で、個人の自由を大幅制限している。中国の異常さを示す方法には、フリーダムハウスが世界中の政治的権利と市民的自由を評価するため考案した指標フリーダムスコアでGDPをプロットすることがある。2021年の中国のフリーダム・スコアは9で、これは「自由ではない」ことを示す最低水準だ。上位5カ国(米国、日本、ドイツ、英国)はいずれも80点以上で、「自由」だことを表している。中国に次ぐ経済大国のサウジアラビアのGDPは834億ドルで、中国の5%の規模にすぎない。(下図 GDPとフリーダムスコアによるプロット)


 

 また、中国は先進国の中で異彩を放ち、自らを発展途上国経済と称し、それに伴う利益を国際機関に求めている。しかし、発展途上国というレッテルは、中国国内の発展が非常に偏っているという、複雑な現実を裏付けている。中国の沿岸部の多くは、内陸部や西部よりはるかに裕福だ。2021年、中国で最も裕福な地域だ北京の一人当たりGDPは約2万8500ドルを誇り、これは多くの高所得先進国並みだ。中国で最貧の甘粛省の一人当たりGDPは6,400ドル未満で、リビアとほぼ同額だ。(下図 省別の一人当たりGDP)

 

 

 

中国のGDP成長率の測定

 中国は、多くの国々よりはるかに高いGDP成長率を達成していることでも知られる。注目すべきは、数十年にわたり続いたことだ。1990年以降、中国は年平均9%強、ピーク時には14%強の猛烈なGDP成長を遂げている。これは、高中所得国の平均よりも速く、世界平均(中国を除く)よりも速いペースだ。中国のGDP成長率は近年冷え込み、2020年にはCovid-19の大流行により、2.2%という最近の最低値まで急落したが、それでも世界の多数国を凌駕する成長率だ。(下図 各国のGDP成長率)

 


 

 経済予測専門家は、中国の将来の経済成長率予測に大きな関心を寄せている。国際通貨基金(IMF)による2022年10月の最新予測では、中国のGDPは2023年に4.4%成長と予想されている。IMFの長期予測では、中国の名目GDPは2027年までに26兆ドル以上に成長し、EU、日本、インドなど主要経済国へリードを広げるが、米国には追いつかないと推測している。しかし、予測は新たな展開で大きく変わる可能性がある。IMFは2023年1月上旬、中国におけるCovid-19患者急増が経済減速につながり、将来の成長予測を下方修正する可能性があると示唆した。(下図 主要国のGDP成長予測)

 

 

 


 

 

中国の自己申告によるGDP数値は、現実を完全に反映していないことが、これまでの研究で明らかになっている。政治的な動機で、しばしば中国当局は経済データを水増しする。その結果、中国経済を追跡するため他の手段を用いる試みが数多くなされてきた。一つがサンフランシスコ連邦準備銀行によるChina Cyclical Activity Tracker (CCAT)で、この指標は、GDP除く8指標を加重平均し、トレンドに対する前年比成長率の乖離を測定することで、中国の経済活動の変動を測定する。ただし、CCATにも限界があり、各指標での歪があり、経済活動全体を正しく反映していない可能性がある。

(下図 CCATによる中国経済の推移)

 

 

 

中国のGDPを分解すると

 中国の特徴は、経済規模や急成長だけではない。その他経済大国と別の成長の原動力に依存している。中国の経済発展は、製造業、建設業、鉱業、公益事業など広大な産業部門により大きく促進されてきた。2020年には、高付加価値の工業生産高は中国のGDPの約38%を占め、米国(18%)の2倍以上となった。その結果、中国のサービス部門(GDPの55%)は、米国(80%)や他のほとんどの先進国より低い。ただ、この傾向が変わりつつあることに注目すべきだ。2010年、中国のサービス部門はGDPの44%に過ぎず、現在より低い水準だった。(下図 分野別GDPへの寄与度)

 

 


 

 

 中国の経済成長を支えてきたのは、膨大な規模の工業・製造業だが、一方で輸出に大きく依存している。経済政策担当部門は、輸出主導の経済成長から脱却し、国内消費主導の経済成長を目指したいと考えている。しかし、中国のGDPは依然として輸出に大きく依存している。2009年の世界金融危機では、世界的な需要減退で中国の輸出が激減し、純輸出によるGDP成長率の割合が急落した。逆に、Covid-19の大流行時に、欧米の大規模な景気刺激策が中国の輸出需要を押し上げた。その結果、2020年の中国のGDP成長率の25%は輸出が稼ぎ出し、1997年以来の高水準となった。(下図 輸出のGDP寄与度の推移)

 


 

 

 中国は輸出主導の経済成長モデルのため、消費主導による成長の余地が少ない。この点で、国内消費が経済成長の主原動力となっているその他先進国と著しく異なる。2020年、中国のGDPに占める消費の割合は55%に過ぎないが、米国や英国では80%を超えている。最近の傾向から、中国はその差を縮めていないことがわかる。中国のGDPに占める消費の割合は、過去20年間で大幅に低下している。(下図 GDPに占める消費の割合の各国比較)

 


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