第59回 福島の処理水海洋放出問題を科学的に批判する環球時報の論調には別の隠れた意図があるのではないか。

第59回 福島第一の処理水問題での、環球時報英語版の論調です。汚染水などという非科学的な用語は使わず、感情論ではなく、科学のロジックで展開しているのはいいのですが、根底にはやはり日本政府の言い分には信用できないという思いが見え隠れするのですが。とはいえ、日本政府も堂々と科学には科学で論拠をあげつつ、説得性ある意志表示を展開してもらいたいものです。やってると、いわれるのかもしれませんが、社説にあるように福島は壊れた原子炉、中国の排水は稼働中の原発からのトリチウムといわれるとドキッとしますよね。問われているのは日本の情報開示のあり方かもしれませんね。とはいえ、原爆の被害と原発事故を同次元で扱うのはどうなんでしょうか。


ご注意 以下はCCP傘下の環球時報英語版の社説を翻訳したものです。当然ながら、本ブログの意見を表明したものではありません。

Japan's dangerous move.Illustration:Liu Rui/GT

Japan's dangerous move.Illustration:Liu Rui/GT


際原子力機関(IAEA)は、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた福島第一原子力発電所の処理水を放出する日本の計画についてのレビューを発表した。しかし、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は序文で、報告書が日本の政策を推奨するものでも支持するものでもないと強調した。



端的に言えば、核汚染された廃水をどのように処理するのが最善かとの問題が残ったままということだ。


2011年以来、東京電力(TEPCO)は溶融した原子炉廃墟を水で冷却してきた。10年以上が経過し、汚染水は100万トン以上蓄積され、原発近くのタンク1,000以上に保管されている。汚染水にはセシウム、リチウム、ストロンチウム、トリチウムなど放射性粒子が含まれる。


2021年4月、日本政府は貯蔵タンクのスペース不足を理由に、廃水を海に放出する東京電力の計画を承認した。その主張によれば、高度液体処理システム(ALPS)はトリチウム除くほとんどの放射性核種を除去でき、原子力発電所ではトリチウムを含む冷却水を排出するのが一般的だという。


このことは、何よりもまず疑問を投げかける。福島は普通の原子力発電所なのか?福島では原子炉が壊れており、亀裂がある可能性が高い。原子炉に直接水をかけると、放射性核種を洗い流す可能性が高い。機能中の原子力発電所では、水が原子炉内の放射性物質と直接接触することはない。福島の特別なリスクを認めないと不誠実で危険な誤解を招く。


もうひとつの疑問は、ALPSの信頼性だ。2018年、東京電力は処理水の80%に海洋放出に必要な安全レベルをはるかに超える危険な放射性核種が含まれていることを認めた。2020年には、タンク内の水の72%を再処理する必要があると報告された。先月、福島を訪れた韓国の専門家訪問団は、ALPSが2013年以来8回も不具合を起こしていることを知った。処理水には、国際的な安全基準を超える高濃度の放射性粒子が含まれたままを示すサンプルがあった。


生物濃縮も考慮すべき要素である。処理水中の放射性核種が一定の基準値内であっても、食物連鎖で生物から生物へと移行する可能性がある。小さなエビが0.0000001mgの放射性物質を体内に保有していた場合、それを1000匹の小さな魚が食べると、その濃度は0.0001mgに上昇する。そして、大きな魚が小さなエビを食べると、それはやがて食卓の一品となる。頂点捕食者である人間の方がはるかにリスクが高い。


海洋排出に関する日本政府の性急な決定は、産業界と環太平洋地域の人々の健康に複数のリスクをもたらす。IAEA報告書は、最終的な選択を下す前に踏むべき多くのステップのひとつに過ぎない。日本はまだ、国際的な利害関係者と誠意ある協議を行い、この問題を徹底的に研究するため、独立した科学者をもっと招き入れる必要がある。核爆発の痛ましい経験を持つ国として、日本は核物質が適切な方法で取り扱われなかった場合の悲惨な結末を誰よりも理解しているはずだ。■



Japan cannot use IAEA report to justify ocean dump of nuclear-contaminated wastewater - Global Times

By Xin Ping

Published: Jul 13, 2023 12:11 PM



The author is a commentator on internationals affairs, writing regularly for Xinhua News, Global Times, China Daily, CGTN etc. He can be reached at xinping604@gmail.com.


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