第44回 黒海で発生したMQ-9墜落事案は米軍による危険な軍事挑発行動が招いた結果に過ぎない。

 第44回 黒海でのMQ-9墜落事件は米軍の挑発行動が原因だ。世界の平和が米国により危険にさらされかねない。したがって米国は「仮想敵国」に向けた世界規模での軍事行動を縮小すべきだとする中共の見解。


ご注意 以下は中共のプロパガンダ紙環球時報英語版の社説をご紹介するものであり、当ブログチェーンの見解を表したものではありません

File photo of an MQ-9 Reaper drone. Photo: VCG


地時間の火曜日、米軍の無人機が黒海上空に墜落し、全世界を不安に陥れた。人々の最初の反応は、誰が責任を負うかの議論ではなく、恐怖だった。一部メディアは、ロシアとウクライナの紛争勃発以来、米国とロシアが「直接対決するリスク」を強調したと述べている。そう言うのは不正確かもしれないが、この事件への国際世論の注目度の高さを反映だ。この事件の直接的な帰結は、ロシア・ウクライナの緊張を紛争勃発以来最高レベルに高め、予期せぬ反応のエスカレートを誘発する可能性があることだ。これは明らかに全世界が見たくないことである。



米軍は今回、空軍の無人機MQ-9リーパーを失い、死傷者は出ていない。落下方法については、米国とロシアで意見が分かれている。モスクワは、今回は「空中兵器を使用していない」という。また、自国の戦闘機はリーパーと「接触しておらず」、墜落は「操縦の結果」だと主張している。米軍は、ロシア戦闘機が黒海上空でアメリカの無人機に燃料を投下した後、衝突し、無人機を墜落させたと発表した。米国務省は、この事件に対する懸念をロシア側に表明した。米国自身も責任の一端を負っていることを自覚しているのか。注目すべきは、リーパー無人機が、米軍作戦で監視や精密打撃の任務を繰り返し行っていることだ。トランプ政権がイラン最高司令官カセム・ソレイマニ暗殺に使用したのも、同無人機だった。今回、黒海空域に墜落した無人機について、米政府関係者は武装していたかを明らかにしようとしなかった。

この問題はコントロール下にあり、米国とロシア両国が合理的な処理を望んでいる。現在の反応から判断すると、モスクワもワシントンも危機のエスカレートは望んでいない。この地域の緊迫した状況から、このような事件に何度も耐えることはできない。爆発物の山の横で、2人が石をぶつけ合うようなものだ。火花が散らない、火花で爆薬が爆発しないと、誰も保証できない。今回の事件は、米露の相互非難で終わるのではなく、両者、特に米国の警戒心を喚起し、両者で危機管理・統制メカニズムを再構築する契機となるべきだろう。


冷戦時代のキューバ・ミサイル危機は世界に衝撃を与えたが、その後そのような危機はなかった。米ソ双方が、このような事件は危険すぎて二度と起こさせないということを十分に理解したからだ。この稀に見る重要なコンセンサスに基づき、米ソはそれぞれ一歩引いてから核軍縮交渉を開始し、「冷戦」が破壊的な 「熱戦」に発展することはなかった。


もちろん、今回のドローン墜落事故はキューバミサイル危機とは比較にならないが、一部法則や論理は共通している。今日、ワシントンは再び大国間対立を推し進め、世界を新たな冷戦の瀬戸際に引きずり込み、破滅的な結果をもたらす可能性を少しずつ高めている。黒海での米軍機とロシア軍機の遭遇の直後、米国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は、ロシア軍機が黒海上で米軍機を迎撃することは「珍しいことではない」と述べたが、これはワシントンがこうした「遭遇」に慣れていることを示している。


米軍ドローンの墜落は偶発的な出来事だが、発生には一定の必然性がある。冷戦終結後、軍用機の遭遇、偶発的な墜落、さらにはジェット機の撃墜といった同様の事件が何度も起こり、中には地域の緊張を深刻に悪化させるものもあったが、ほとんどが米軍に関係するものだった。そして標的は、ワシントンが公に想像上の敵とみなす国であることが多かった。このことは非常に示唆に富んでいる。米国が海外で軍事作戦を展開するにつれ、極端な挑発行為の頻度も増えている。一方、大国間関係の雰囲気は著しく悪化し、二国間の制約、交流、核軍備管理条約などコミュニケーション・メカニズムも大きく損なわれている。このような状況下で、誤射で事態がエスカレートし、制御不能に陥る可能性も高まっている。無視できない緊急事態が常に想起される。


平和はとても脆く、危機管理も重要だが、根本で発生を抑えることがより重要だ。双方が望まない戦争にならないようにすることが急務だ。今月は、米国がイラク戦争を開始して20年目にあたるが、米国や国際社会が深く反省するには、20年あれば十分なはずだ。ガーディアン紙が言うように、「このようなことが起こるたびに、世界は運を少しずつ使い果たしていく」のだ。世界の平和と安定をいつも 「運 」に頼ってはいられない。■


Why it is always US military plane that runs into ‘accident’: Global Times editorial

By Global Times

Published: Mar 16, 2023 12:12 AM


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