第82回 ウクライナへ亡命したヘリパイロットをスペインで白昼暗殺したロシアは射殺を正当化----気に入らなければ謀殺は当たり前に考える思考方式が怖い

(この記事は航空宇宙ビジネス短信ターミナル2(軍事航空など)ブログと共通の記事です)


第82回 自分たちに邪魔な者、裏切り者は抹殺して良いと平気で実行に移すロシアの権力側には多様性、意見の違いを認める思考は皆無で、黙認せざるを得ない国民にも民主主義の価値観は理解できない対象のようです。ただ、これはロシアに限ったことではなく、中共でも不審な行方不明、死亡は当たり前のことで、日本を取り巻く「敵性国家」に共通の行動様式ですので、われわれも注意が必要です。


Captain Maxim Kuzminov, Pilot Of A Russian Military Mi-8 Helicopter In KyivUkrainian Government


ロシアのスパイ長官、最近射殺されたパイロット亡命者は「道徳的な死体 」と語る

ウクライナに亡命した元ロシア航空宇宙軍Mi-8ヘリコプターパイロット、マキシム・クズミノフMaxim Kuzminovの遺体が先週スペインで発見された。


ロシアの対外情報部 (SVR)は、昨年ウクライナに亡命したロシア軍ヘリコプターパイロットの暴力的な死に対応している。先週スペインで射殺されているのが発見されたロシア航空宇宙軍(VKS)のパイロット、マキシム・クズミノフの死において、クレムリンの潜在的な役割への疑惑は、これからさらに重くのしかかるだろう。

 「ロシアでは、死者について良いことを言うか、まったく何も言わないかのどちらかを選ぶのが通例です」と、SVR長官であるセルゲイ・ナリシキンは、クズミノフについて質問されて答えた。

 「この裏切り者で犯罪者は、汚らわしく恐ろしい犯罪を計画したまさにその瞬間に、道徳的な死体となった」とナリシキンはロシア国営タス通信の発言を引用した。

 クズミノフの遺体は先週火曜日、スペイン地中海沿岸のアリカンテ地方にあるビリャホヨサの団地の下の駐車場のスロープで発見された。報道では、正体不明の武装集団に殺害され、銃弾12発が撃ち込まれたとされている。

 近くの町エル・カンペーロで焼け焦げた車が発見され、スペイン警察は当初、ギャングがらみの銃撃事件と考えていた。

 クズミノフはウクライナを離れた後、人気の観光地アリカンテに移り住んでいたようだ。スペインの国営通信社EFEによれば、クズミノフはウクライナのパスポートを使用しながら、別の名前でアリカンテに住んでいたという。

 ウクライナ国防省情報局(GUR)の匿名情報源を引用し、ウクライナ・プラウダ紙は、クズミノフの遺体は彼の元ガールフレンドによって発見されたと報じた。

 「彼はスペイン移住を決めた。判明しているところでは、彼は元恋人を自宅に招き、射殺体で発見された」と同じ情報筋が語っている。

 クズミノフの死亡は、GURの報道官アンドリー・ユーソフも確認しているが、それ以上の詳細は明らかにしていない。

 スペイン国家警察は今のところ、この件についてコメントしていない。

 ロシアのコメンテーターの間ではすでに、クズミノフは死んでおらず、スペインでの事件はウクライナ情報機関によるでっち上げではないかという噂が流れている。

 ウクライナ南部のロシア人諜報員ウラジーミル・ロゴフは、メッセージアプリ『テレグラム』にこう書き込んだ。「彼らは裏切り者のために白紙と新しい名前で新しい経歴を作りたいのだ」。

 その証拠はないが、『ウォーゾーン』がこの話を最初に報じて以来、GURが首謀した亡命がどのように行われたかについて、さらに詳細が明らかになってきた。

 ウクライナ側によれば、この作戦はコードネーム「Synytsia」(小型の渡り鳥)と呼ばれ、6ヶ月の計画期間が必要だったという。

 当初、クズミノフはGURのテレグラム・チャンネルを通じ自ら連絡を取っていたようだ。

 「私が連絡を取り、秘密のチャットを作り、やり取りを始めました」とクズミノフは後に説明した。「誰も私に意見を押し付けなかった。それから6ヶ月間、私たちはルートを構築し、どうするのがベストかを考えていた」。

 「ウクライナ諜報機関の代表と連絡を取り、状況を説明した。安全保障、新しい書類、報酬が提示された。私たちは詳細を話し合い、フライトの計画を立て始めました」とクズミノフ(作戦当時28歳)は付け加えた。

 亡命そのものに先立ち、パイロットの家族は安全のためロシアから引き出された。

 昨年8月23日、現地時間の午後4時30分、クズミノフはロシアのクルスク飛行場を離陸した。彼のMi-8AMTShヒップ・ヘリコプターは、2名の乗員を乗せ、Su-27とSu-30SM戦闘機の部品を積んでいたと伝えられている。乗員は全員非武装だったという。

 ウクライナ領に近づくにつれ、クズミノフは超低空飛行(約16~33フィート)を始め、無線を使用した。ロシアの防空部隊は、国境を越えたヘリコプターに発砲したと報じられていることから、この時点で事件を察知していたようだ。

 「誰が発砲したのかはっきりしたことは言えませんが、ロシア側だと思います。私は小火器で足を撃たれた。その後、20キロほど飛行し、指定場所(ハリコフ地方)に着陸した」とクズミノフは語った。

 その後のキエフでの記者会見で、クズミノフは、他の2人の乗組員にはウクライナから良い待遇を受けられると説得したと主張した。「しかし、彼らは怖くなり、攻撃的な態度を取り始め、ついにはヘリコプターから飛び出してしまった。乗員は二人とも死亡した」。

 GURのチーフであるキリロ・ブダノフ空軍少将 Maj. Gen. Kyrylo Budanovは、この事件について次のように説明している:

 「着陸場所に気づいて乗員は逃げようとした。残念なことに、彼らは射殺されました。私たちは(彼らを)生きて連れて行きたかったのですが」。

 昨年9月の記者会見当時、クズミノフはウクライナ陸軍航空隊への入隊を検討しているのではないかとの見方があった。報道によれば、彼はウクライナ当局から50万ドル相当の報奨金を受け取ったという。しかし、理由は何であれ、クズミノフはウクライナ側に加わることを断念し、スペインに移住したようだ。スペインに渡ったクズミノフは、暗殺にさらされやすくなっていたようだ。ウクライナ・プラウダ紙によると、ロシアは「クズミノフを殺すと何度も脅していた」という。

 この事件に関して、前回本誌は、「クズミノフは残りの人生をおびえながら暮らすことになりそうだ」と書いていたが、この予言はあまりにも文字通りとなったわけだ。

 彼の殺害がクレムリンによって画策されたものなのかは不明かもしれないが、プーチンの治安機関のせいにいわれる殺人はこれが初めてではないだろう。ロシアの野党指導者アレクセイ・ナヴァルニーの妻ユリア・ナヴァルナヤが、北極圏の収容所で夫を殺害したとモスクワを非難した。

 もう一人の著名なロシア反体制派、アレクサンドル・リトビネンコAlexander Litvinenkoは2006年に連邦保安局(FSB)によって毒殺された。2018年には、同組織の諜報員がロシアの二重スパイ、セルゲイ・スクリパリSergei Skripalを殺害しようとしたとされるが、失敗に終わった。2021年、ドイツ法廷の判事は、2000年代のチェチェン紛争で民兵を指揮したジョージア国籍のチェチェン人、ゼリムハン・ハンゴシュヴィリZelimkhan Khangoshviliの殺害をロシアのせいにした。

 クズミノフの話は血なまぐさい結末を迎えたが、この作戦はウクライナにとって重要な出来事であったことに変わりはなく、大胆な任務がその後生まれるきっかけになったとしても不思議ではない。■


Russia's Spy Chief Says Recently Gunned-Down Pilot Defector Was A “Moral Corpse”

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED FEB 20, 2024 5:12 PM EST



 

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